栄和堂ブログ

鎌倉の端っこにあった書店「栄和堂」僕らはここを「ブックスペース」として本屋の再発明をしていきます。公式HP http://eiwado.space/

消費者としてでは無く

先日、この本を読みました。

www.kinokuniya.co.jp

西国分寺のカフェ「クルミドコーヒー」の店主、影山さんが、「カフェからはじめる人を手段化しない経済」という副題で書いた本です。

控えめに言って、すごくいい本でした。個人店を経営している人にとっては、大きく頷いてしまうポイントが多数あるのでは無いでしょうか。頭の中がお花畑系の話では無く、かと言って、「こうすれば儲かる!」的なノウハウ系の本でも無い、非常に「中庸」的に書かれています。

お客様の「消費者的な人格」を刺激しない

クルミドコーヒーがポイントカードをやらない理由を以下のように述べています。

お店に来てくださる方の「消費者的な人格」を刺激したくないと考えたからだ。それとは、「できるだけ少ないコストで、できるだけ多くのものを手に入れようとする」人格。つまりは「おトクな買い物」を求める人間の性向だ

クルミドコーヒーでは、テーブルにくるみが置いてあり、お客さんは(理論的には)好きなだけ食べることができます。この消費者的な視点を刺激してしまっていると、このくるみが持ち帰られたり、食べ放題なんだから、と無碍に扱われたりする可能性があります。お店がお客様の消費者的な人格でなく、受贈者的な人格(受け取ったものが大きいので、何かお返しをしたい、という人格)を引き出して付き合えているか、そのバロメータとして、テーブルの上のくるみを捉えているそうです。

消費者的な人格からは本は寄贈されない

本はとかく重いです。持ち運びに苦労します。でも、栄和堂には本を寄贈してくれる人がちょくちょく現れてくれます。寄贈したらコーヒーがタダになるわけでも無いし、ほぼ公式なアナウンスをしていないにも関わらず、です(近々しますね)

これはまさに「消費者的な側面でなく、受贈者的な側面」を覗かせてくれている証拠だと、この本を読んで気付かされました。栄和堂にとって、この本の寄贈が1つのバロメータになるのでは無いかと。

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儲かるか、だけでは無く、価値があるか?

「儲からないでしょう」と言われる度に、「まぁぼちぼちですねー…」とお応えしていますが、なんとも言えない複雑な気持ちになります。

儲かるとは、より少ないコストでより大きな利益を生める、ということで、それは商いとして絶対に必要な視点です。それが無いとお店が潰れてしまう。ただその「少ないコストで大きな利益」という考え方は消費者的な側面と同様の考え方です。それがまずありきなのではなく、その上位の概念として「誰かにとって(これは僕や親父にとっても)価値があるかどうか」、それを徹底して考えるべきなんじゃないかと思います。


6月23日に、栄和堂初の音楽イベント「本と音」が行われます。 お申し込み方法:お名前と申込人数をご記入の上、下記いずれかの連絡先までご連絡ください。

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  • Facebookイベントページにて「参加予定」ボタン押下 → 本と音vol.1
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